地域社会とともに

あれから1年、私が見た陸前高田市

「この峠を越えると被災地です」


そのドライバーの言葉から、私たちは言葉を失いました。峠を越えて私たちの眼下に広がったものは…。そこが被災地であると知らされていなければ、ただの未開の平野にしか眼に写りません。
 市役所、消防署、県立病院やショッピングモールなどの残骸が点々と残されている光景に、改めてここは「被災地である」ことを現地は証明しています。そこには、人や動物の気配は全くなく音もなく、唯一、海岸近くで瓦礫処理をしている2~3台のショベルカーの音がさみしく聞こえるだけでした。
  
現地をまわりながらドライバーから念のためにと「できれば、次の言葉は現地の方に言わないでほしい」と、忠告がありました。その言葉とは、「いかがですか」「大変だったでしょう」「どうでしたか」「お悔やみ(お見舞い)申し上げます」「ご家族の方や家はどう なりましたか」「避難所生活はいかがで すか」  現地の方々はこの1年間、いやというほど聞かされてきた言葉だからです。

 そうこうするうちに、車は今回の訪問先である菅原みき子さんが待つ「げん氣ハウス」に到着します。しかしドライバーの話を聞かされた私たちは何をしゃべっていいかわかりませんでした。
 事前に私たちは明るく振舞おうと打合せをしていましたが、「こんにちは、初めまして」以外の言葉が続きません。 なにより菅原さんから「おうどん美味しかったですよ」の言葉に救われました。
 そのあとすぐに私の方から「まずは自己紹介をしましょう」と呼びかけたところ、菅原さんを含む5名の現地の方は「恥ずかしいなぁ」といいながらも、それぞれが、それぞれの言葉で自己紹介をしていただきました。それからは、お互いがとけあうことができ、菅原さんを中心に「3.11」から今日にいたるまでのお話をいろいろとお伺いすることができました。 しかし、それに対して私たちは返す言葉もなく、ただただお話をお伺いし、うなずき返すくらいしかできなかったのが現実でした。


陸前高田市から戻って2週間が経ちました。やっと、心の整理ができたというか…。私たちは、陸前高田、気仙沼、仙台空港を視察し、それから1週間は悶々とした日々を過ごしていました。
「絆」とはなにか? 「鎮魂」とは?これが私たちの最大の課題である。
やっと、ここまでこぎつけたという感じですが、現地の方は、それを1年間、ずっと辛抱されてきたと思えば、遅ればせながら私たちも、現地の方々の仲間にさせていただければという思いです。
 今さらでもなく現地の方々が失ったものは多くあります。 たとえば、家族、友人、家、会社等々…。 私は、その失ったものは2つに分類できると思います。ひとつは戻ってこないもの、もう一つは努力次第で戻ってくるもの。 訪問の最後に「菅原さんにとって『絆』とはなんでしょうか?」の問いに菅原さんは「今は、わからない…」と答えられました。 その話を伺い、私は失ったものの中には「絆」もあると感じました。
  
 震災前は「家族や友人との絆」があり、震災とともにその「絆」の一部は失われてしまいました。しかし、震災発生直後から仮設住宅ができるまでは、現地の方々は、避難所生活で「新たな絆」で結ばれました。ところが、仮設住宅への転居により「絆」で結ばれた仲間たちがバラバラになっている現状をお聞きし、震災前の「失った家族や友人との絆」を取り戻すことはできませんが、避難所生活での「新たな絆」は取り戻すことができるのではないかと考えさせられました。
 1年間で2度をも「絆」を失くした現地の方々にとって、本当の「絆」とは何か?本当の復興支援とは何か?を私たちが一緒になって考えることも大切ではないかと思います。
 私の知人から以前、こんな話を聞いたことがあります。
 「もし、目の前にお腹がすいた人がいれば、食物を提供することも助けになるが、時間とともにその人はまたお腹がすいたというかもしれません。しかし、働く環境、働く意思をその方に与えてあげることができれば、その方はもうお腹がすいたとは言わないかもしれません」
 私たちは、現地の方とともに、これからの時代を生きぬく環境、生きぬく意志を一緒になって考え学ぶことができればと願っています。
 

松田哲也税理士事務所

登録:
四国税理士会高松支部
第111918号
所在地:
〒761-0443
香川県高松市川島東町935番地5
アクセス
受付:
午前9時~17時
定休日:
土曜・日曜・祝祭日
TEL:
087-887-3188
FAX:
087-887-3199
メールでのご相談

ページの上部へ戻る